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『キミスイ』作者によるアンチセカイ系映画『青くて痛くて脆い』 レビュー動画書き起こし風レビュー

さあ始まりましたSWDの映画レビュー、今日レビューしていく映画はこちら!『青くて痛くて脆い』

<BGM:BLUE ENCOUNT「ユメミグサ」が流れる>

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「君の膵臓をたべたい」でデビューした小説家・住野よるの第五作目「青くて痛くて脆い」を実写映画化。
『キングダム』の吉沢亮を主演に迎え、ヒロインを『湯を沸かすほどの熱い愛』の杉咲花が務める。人付き合いが苦手な大学生田畑楓と、空気の読めない発言ばかりで周囲から浮きまくっている秋好寿乃。まるで正反対なひとりぼっち同士の2人が「世界を変える」という大それた目標を掲げる秘密結社サークル【モアイ】を作るが、秋好はこの世界からいなくなってしまいモアイも社会人とのコネ作りや企業への媚売りを目的とした意識高い系就活サークルに成り下がってしまう。
取り残されてしまった楓は、秋好が叶えたかった夢を取り戻すために親友や後輩と手を組み【モアイ奪還計画】を企む....。

 

といったあらすじなんですけども…皆さんこの映画観ました?夏あたりに劇場予告で散々流れてたんでタイトルくらいは知ってる方も多いかなとは思うんですけど…最初のなんとなくの「あーそういうヤツね」って印象で観ない映画の箱に入れてませんでした?実は僕もそうだったんですよね(笑)

まあ今年は本来春や夏に公開される予定だった大作が延期された結果、9月~10月間に話題作が集中したってのも大きいと思うんですけど、なんとなくで後回しにしてましたよね?

でも最初に結論言います。僕は、思いもよらず、めっちゃ刺さってしまった作品でした。最近はこういうご時世で中々劇場にも行きづらいということで、リピートは控えて新作を観ることを優先してたんですけども、それでも2回観ちゃいましたね。刺さりすぎて。

この思いもよらず、ってのはそもそも僕自身が原作の住野よるさんの作品に対して間違った偏見を持っていたことが大きいんですけども、今作はそういった、なんとなくの印象で人を決めつけることに対しても警鐘を鳴らす作品でもあるので。その辺も含めてレビューしていきたいと思います!

 

はい、まず原作者の住野よるさんなんですが…男性の方なんですね。なんとなく女性っぽいペンネームなので勘違いしてたんですけども、今作の「女々しい男描写」の解像度の高さなんかは確かにな~といった感じで納得しましたね。その辺も追々触れていきましょう。

で、元々は小説投稿サイト「小説家になろう」出身の作家ということで、代表作として一番皆さんに聞き馴染みがあるのは、やはりデビュー作の『君の膵臓をたべたい』ではないでしょうか。当時高校生だった浜辺美波さん、今や国民的女優といった感じで同じ石川県出身として鼻が高いなーなんて今更思っているわけですけども、そんな彼女の出世作となった2017年の実写映画版、そして2018年のアニメ映画版も記憶に新しいと思います。

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ちなみにアニメ版は主役の男の子を『仮面ライダー鎧武』のミッチでお馴染みの高杉真宙君が演じてて個人的に気になっていたんですけども、当時は恋愛映画アレルギーを拗らせていたというのもありスルーしていたんですよね。こちらも機会があれば見てみようかなと思っています。

 

さて、今作を語る際にこの『キミスイ』を語らないわけにはいかないのでまずはこちらの作品に触れていきたいと思います。

というのも、原作者の住野さん自身がこの『青くて痛くて脆い』について「キミスイ感動してくれた全ての人たちの心を、 この本で塗り替えたい」とインタビューで語ってるんですよね。いわば「アンチ青春映画」としての今作なんですけども、じゃあ僕はキミスイをどう感じたかっていうと…正直あまりピンとこなかったというのが率直な感想なんですよね。

簡単にあらすじをなぞると、主人公の高校生の男の子が病院で「共病文庫」と書かれた一冊の本を発見するんだけど、それがクラスメイトの女の子の秘密の日記帳だったことが判明し、また彼女には難病があり余命が長くないことが分かり…という話なんですね。…なんですけども、金曜ロードショーで放送されてたのを雑に流し見してたっていう僕の視聴環境の悪さを差し引いてもよくある難病モノにしか見えなくて、イマイチのめりこめなかったんですよね。

「死ぬまでにやりたいことリスト」なんかベタ中のベタなモチーフだし、終盤の交通事故のくだりなんかあまりにも唐突だしね。今めちゃくちゃ重大なネタバレをサラッとしちゃいましたけども。死は君たちが思ってるほどドラマチックなものじゃなく唐突に訪れるものだ、的なことを伝えたかったのかもしれないけどさ。

まあ、主演の浜辺美波さんはめちゃくちゃ可愛かったけどね。死ぬほど可愛い当時高校生の浜辺美波のあの一瞬を切り取ってるってだけでアイドル映画として価値はあると思いますが、それ以上の感想は無かったと。

 

そんな『キミスイ』に全くノレなかった自分が更にその『キミスイ』の価値観を塗り替えるって言われても…って感じで最初は全く期待してなかったんですよ。そもそものスタートラインにすら立ててないんじゃないかって感じで。

でもそんな不安は杞憂に過ぎなかったどころか今年ベスト級の大傑作でしたというわけで、ここからようやく本編の話に入っていくんですが、その前にYouTube東宝公式チャンネルさんの方で本編の冒頭映像を10分にまとめたあらすじ動画が公開されているのでそちらも一緒にご覧いただけるとより作品の雰囲気がイメージしやすいかと思います。ただ、こちらも完全初見で楽しみたい方にとってはノイズでしかないと思うので(笑)まっさらな状態で観たい方は今すぐブラウザバックして映画のチケットを取ってください。

www.youtube.com

 

はい、まずド頭なんですけども、いきなりパラパラ漫画のような映像から始まるんですね。これは映画中に繰り返し出てくるモチーフで、この棒人間が歩いている映像が徐々に大学の風景に変わっていく演出なんかは、それこそ映画ならではといった感じで中々印象的な辺りなんですけども、この映像のバックで流れるモノローグで、主人公の楓は「不用意に人を傷つけないこと、そして人の意見を否定しないこと」が生きる上でのテーマだと分かります。ここで面白いのはその「人を傷つけない」理由が「傷つけてしまった誰かから傷つけられる」ことが嫌だからということですね。彼は「人を傷つけること」そのものではなく、あくまで人間関係によって起きる摩擦を恐れているんです。

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そんな彼の性格が一瞬で伝わってくる冒頭のシークエンス、これが巧いですね。大学のサークル勧誘のチラシを、一旦全て受け取ってから人目のつかないところでまとめて捨てるっていう。最初から目を通すつもりは無いけど、その都度断るのも面倒っていう彼の性格を表してるんですね。これはまさに陰の者あるあるというか、僕も家に宗教勧誘が来たときなんかはまさに「居留守してインターホンを数回鳴らされたり下手に断ろうとして話がこじれるのも面倒だな…」ってなって毎回受け取ってますからね(笑)

 

というわけで冒頭から既に「あっ、これ面白い映画だ…」って雰囲気がビンビンに漂ってるんですが、次の今作のヒロインである秋好との出会いのシーン!これがヤバいんです。

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大学の授業中、何か質問はあるか?といった先生の問いに対して秋好がまっすぐ手を挙げて、「どうして戦争は無くならないんですか?」と質問するんですね。この時点でまーヤバいんですけど、軽くあしらおうとする教授に対して、なおも秋好は理想論を語り続けるという。しかもこれ、入学して早々の出来事ですからね?

そもそも大学の教授の「質問はあるか?」って美容院の「痒いところありますか?」みたいなもんですからね。それに対してわざわざ「耳の裏とつむじの辺りが痒いんで集中的に掻いてもらえますか?」って細かく注文してくる客がいたらちょっと「え?」ってなりますよね。まあ今の例えは自分でもハマってない感覚あったんで忘れて欲しいんですけども(笑)しかも僕自身は大学で授業受けたこと一回もないっていう(笑)

 

で、この出来事をきっかけに2人の交流が始まるんですが、最初の方は秋好が一方的に話しかけてるだけで楓は迷惑そうにしてるんですね。この辺りの会話シーンは吉沢亮演じる楓の全身に滲み出る隠キャオーラ、特に目の泳ぎ方なんかがまさにそういう人、といった感じで凄いですね。この映画、全編を通して吉沢亮の目の演技が凄くてそれだけでご飯3杯いけますって感じなんですけど(笑) あと、他人と会話する時に意識して声をワントーン上げてるんだろうな~っていう、ちょっと上ずってる感じとかね。

で、その吉沢亮演じる楓の隠な感じとは対照的な、杉咲花演じる秋好の純粋さ、陽っぷりですよね。これがもう、あまりにも違う人種過ぎて笑っちゃうっていう。序盤は、そんな全然違う人種の2人が大学で浮いてるっていう共通点だけで徐々に仲良くなっていく面白さもあるんですよね。

秋好が興味を持ってるサークルのチョイスもいいですよね。模擬国連て!僕なんかは最初これ、架空の意識高い系サークルなのかななんて思ったりしたんですけど、調べたらそれなりにどこにでもあるサークルっぽいですね(笑) 

そんな中どのサークルにも馴染めなかった、やりたいことが無かったと語る秋好に対し楓は「そんなにやりたいことがあるなら自分で作ったら?」と提案するわけですが、これが冒頭のあらすじでも出てきた「モアイ」という秘密結社を作るキッカケになるわけです。まあ秘密結社とは言ってもゴミ拾いなどのボランティア活動を通して世界をよりよくしていくという小さな組織なんですけども。

 

ここまで聞いて、何かこういう話聞いた事あるな~って思った方いますよね。そう、これ『涼宮ハルヒの憂鬱』の冒頭にそっくりなんですよ!物事を俯瞰で見てるやれやれ系主人公とぶっ飛んだ思考を持った女の子が2人の秘密結社を作るっていう。

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まあ僕自身は『ハルヒ』をまともに観たことはないんですが(笑)でもそんな僕でも「これハルヒじゃん!SOS団じゃん!」ってなるくらいなんで恐らくこれは意図的なものだと思います。このあえて定型的なセカイ系モチーフはしっかり後半の展開に活かされていきます。

そして、モアイでのボランティア活動を通し、だんだんと秋好の青臭い考え方も悪くないんじゃないかと考えるようになる楓なんですが…ここで時系列が一気に3年後に飛び、秋好が既にこの世界からいなくなってしまったこと、そしてモアイが当初の目的から離れた意識高い系就活サークルに変わってしまったことが語られます。

ここで、今作の青春サスペンスとしての側面が明かされたところで、ゆっくりと『青くて痛くて脆い』というタイトルが浮かび上がってくるという!これもう、既に最高でしょ(笑) タイトルの出し方が最高な映画はそれだけで加点されますからね。

 

はい、そしてここからは大学4年生になった楓の視点で過去と現在の時系列を行き来しながら、どうして彼女は死んでしまったのか?どうしてモアイは変わってしまったのか?を徐々に明らかにしていきます。この、結果から見せて過程を逆算していくという手法はともすれば予定調和的な後出しジャンケンに見えてしまうと思うんですが、並行して描かれるモアイへ潜入し組織の闇を暴くスパイパートが割と緊迫感を持って観れるつくりになっていることや、物語中盤にある大仕掛けのおかげで個人的には全く気にならなかったです。じゃあその大仕掛けってなんだよって話なんですが…。

はい、というわけでここからはネタバレして欲しくない!完全にまっさらな状態で観たい!って方は今すぐブラウザバックしてください!まあ、正直予告とかで予想できる範囲ではあるかなと思うんですが、僕は完全初見で観てかなり驚かされた部分でもあったので。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そろそろよろしいでしょうか…?では中盤以降の話をしていきます。

中盤の回想で、モアイが変わる原因となったある人物が出てきます。それが柄本佑さん演じる脇坂という男なんですけど、このキャラが二人だけの世界、この場合はカタカナの方のセカイと言った方がいいかもしれません、二人だけのセカイだったモアイに加入することで楓は徐々に疎外感を感じていくようになるんですね。

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この脇坂というキャラ、ファーストコンタクトからにじみ出る、うさん臭さというか異物感が最高でやはり柄本さんは名優の血を引いてるだけあるな~なんて感じるんですけどもね。ともかく彼の差し金でモアイが当初のコンセプトから離れ巨大な存在になっていったことや、秋好と脇坂が知らない間に付き合っていた(!)ことを知った楓は、モアイを去り自分からモアイを奪った者たちに復讐を誓い、冒頭のシーンへ…となるわけです。


はい、ここで序盤から死んだ、この世界からいなくなってしまったとされていた秋好が実は健在で、活動内容が大きく変わってしまった今もモアイの代表を務めていることが分かります。つまり楓が言う「死んだ」とは自分のセカイからいなくなった。自分が思い描いていた秋好ではなくなったことを指していたんです。

この展開も中々衝撃的というか、「どうせなんだかんだ言って主役の二人が結ばれるんでしょ?」っていう斜に構えた見方をした人とか所謂セカイ系を散々見てきたオタクほど騙されやすい話だと思うんですよねこれ(笑)不可侵だと思い込んでいた領域がズカズカと踏み荒らされる感覚というか。

だってこれ、言ってみればキョンの見てないとこでハルヒと小泉が付き合ってたみたいな話ですからね!?『ハルヒif』みたいな話なんですよ!まあ繰り返し言いますけど、僕はハルヒ見たこと無いんで例え間違ってたら申し訳ないんですけど(笑)

 

とはいえよくよく話を聞いてると、秋好側もそこに至るまでに楓に対して何度もこのままでいいの?楓はどうしたいの?ってことを聞いてるんですよね。でも人の意見を否定したくない、それによって生じるかもしれない人間関係の摩擦を恐れる楓はその度に自分の気持ちに蓋をしてはぐらかしてるんです。この辺展開を分かって観てるとかなりもどかしい部分でもあるんですけど(笑) 二人のディスコミュニケーションの話でもあるんですね。

 

そんなある意味自業自得とも言えるような理由でモアイへの復讐をしていたことが分かるんですが…ここから完全に吉沢亮暴走タイムに入ります(笑)

モアイの批判を書き殴ったチラシを学校中にばら撒く吉沢亮、モアイの内部情報をTwitterに匿名で投稿して炎上させる吉沢亮、あれだけ好きだった秋好に罵倒を浴びせまくる吉沢亮…とにかく吉沢亮が嫉妬と正義感に狂っていく様が圧巻なんですよ!!

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冒頭で吉沢亮の目の演技がヤバい!って言ったと思うんですけど、特に秋好との直接対決シーンとかはもう見てるだけで辛くなってきますね。ここで、予告でも使われてる秋好の「気持ち悪い」って台詞が出てくるんですが、それを言われた瞬間のあの、今にも涙が溢れそうな目で、ちっぽけな自分の自我を守るために思ってもない罵声を浴びせ続けるところなんかもうね…。

 

 

はい、というわけでこの映画、起きてしまったことだけを追っていくと、大学生活の最初にたまたま話しかけられただけで自分に好意を持ってると勘違いした陰キャ男子が逆恨みで暴走していくだけの話にも思えるし、主人公の楓が女々しい!共感できない!っていう人が多いのも分かるんですが…じゃあ楓が彼女と過ごした時間は完全に無駄なものだったか?偽りのものだったか?と言われると、全くそんなことは無いんですよね。

中盤の回想で、楓と秋好がボランティア活動の一環でフリースクールに通う瑞季という不登校の少女と交流するシーンがあります。

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アニメファン的には『天気の子』陽菜役でもお馴染みの森七奈さんが演じていてこれまた最高のキャスティングなんですが、彼女は現に二人との交流を通じて勉強の楽しさを知り、音楽に自分の居場所を見つけることができたんですよね。世界を救おうと行動したつもりが何も変えられなかった、そんな二人は確かに彼女の世界を変えていたんですよ。このフリースクールのシーン及び瑞季は原作には存在しない改変ポイントらしいんですが、楓と秋好の青春時代の象徴のようなキャラクターで個人的には大正解だと思います。

 

そんなこんなで楓の小さな嫉妬心から始まったモアイ奪還作戦は一旦の終わりを迎えるわけですが、その結果としてモアイは解散に追い込まれてしまい、秋好を傷つけてしまったという事実だけが残ります。

ここで辛いのは、あの、世界を本気で救えると信じて疑わなかった秋好ですら自分の行動は間違っていたのかもしれない、自分勝手な自己満足だったのかもしれないと振り返っているところですよね。

ライムスター宇多丸氏が自身の青春映画評の中でよく「無限に思えた可能性の輪が閉じるのが青春の終わり」と話しているんですが、まさにそういう話なんですよ。このシーンは楓の青春の終わりでありながら、同時に秋好の青春の終わりでもあるっていう。

 

ただこの映画が素晴らしいのは、その一旦閉じた可能性の輪を、また更に開くというか、残された可能性を信じてるところなんですよね。

ラスト、何も変わらなかったかに見えた世界で秋好だけがいない日常を過ごしてた楓が、一度解散した後、有志の力で本来の姿を取り戻しつつあるモアイを見て走り出すあのシーン!もう、男泣きですよ。今まで自分の想いに蓋をして、傷つくことを恐れてた楓の、まさに青くて痛い着地ですよね。

そしてこのラストの、あえて秋好の表情を見せない演出、個人的には山田尚子監督『リズと青い鳥』のラストカットを思い出したりもしました。あれも希美とみぞれという女の子達のディスコミュニケーションの話でしたよね。あとちょっと『インセプション』のラスト的なものも感じたっていう(笑) 結果そのものより、結果を気にしなくなった事が重要っていうね。まあこれに関しては最近『テネット』に影響されてノーラン作品をちょいちょい観てるってだけのこじつけなんですけども(笑)

 

で、この映画が伝えたかったことって結局何だったのって話なんですけど、僕の解釈ですよ?僕の解釈は「色んな自分を肯定してあげよう」っていうことだと思うんですよ。

というのも、中盤の飲み会のシーンで本田というキャラ、通称ポンちゃんが1年の後輩に向けてこんなセリフを言ってるんです。うろ覚えの意訳になってしまいますが聞いてください。

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 「お酒を飲んでヘラヘラしてるのも私、クソ真面目に遠恋してるのも私。多分100種類くらいの自分がいるけど、どれも全部私なんだよ」

…というセリフなんですが、これは楓に対しての言葉でもあるんですよね。

楓は自分の人生に「人を傷つけない」というテーマを掲げ、それに縛られるがゆえに自らの殻を破れなかったキャラなわけですが、その姿勢は他者に対しても同じです。自らのイメージ、こうあってほしいという理想からはみ出した瞬間に裏切られた、傷つけられたと感じ更に負のスパイラルに落ちていく…今作はそんな、自分や他人に対しテーマを設定し、その枠から抜け出せない人間を戒めるような作品なんですね。ここでも、あえての定型的なセカイ系っぽい設定が活きてくるわけです。

恐ろしいのはこの話を、どちらかというとセカイ系を世に送り出す側であるところの住野よるさんが書いているということですよ!まさに住野よるさん自身が、「高校生の純粋な恋愛を書く住野よるも、大学生の痛い恋愛を書く住野よるも、全部私なんだよ」って言ってるような話だったんですね(笑)

 

はい!というわけで『青くて痛くて脆い』について語ってきましたが…2回目を鑑賞した勢いのまま、取り留めなく喋ってしまったのでお聞き苦しいものになっていましたら申し訳ありません!

主演の吉沢亮さんは2011年に『仮面ライダーフォーゼ』でデビューしてから2017年の実写『銀魂』で評価、ブレイクするまで約6年という実に遅咲きな俳優だったわけですけども…彼の経歴に残る重要な一作になったんではないかと思っております!この男の演技の幅、本当に底知れないですよ…!

また、吉沢亮さん筆頭に役者陣が本当に素晴らしいですね!個人的にはモアイの幹部、テン役の清水尋也さんが出てきてからのイヤ~な大学生描写、イヤ~なSNS描写、これ褒め言葉なんですけども、ここら辺は朝井リョウさん原作の『何者』とかを思い出した辺りで楽しかったですし、あとイヤな役と言えば光石研さんね!これがホントに胸糞悪くなる系のイヤさで、人によっては覚悟が必要なんじゃないかっていう…めちゃくちゃ褒めてますけどもね。ともあれ、今を彩る役者陣が織りなすイヤ~な人間関係を楽しめるという点でもオススメです!(笑)

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はい、本当は監督の狩山俊輔さんの経歴や演出についてとかね!他にも色々語りたいことはあったんですがあまりにも動画が長くなりすぎるので今回はここまでにさせていただきます!

ということで『青くて痛くて脆い』個人的には今年ベスト級の大事な作品になってしまいました!8月下旬公開の作品ということで既に公開を終了している劇場も多いんですが、観てから色々語りたくなること間違いなしの作品なので、週末観る映画に悩んでいる方は是非是非劇場に足を運んでみてください!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最近映画レビュー系の動画を見ることが多く真似したいなと思ったんですが、自分で録音して投稿する技術も勇気もないのでこういう形になりました。思ったより全然それっぽくならなくてビックリしたと同時に、レビュアーの方たちは大変なことをやってるんだなあと思いました。もう二度とやらないと思います。

ともあれ僕をこんな青くて痛い行動に走らせてしまった作品、『青くて痛くて脆い』は最高の映画なので皆さん観てください。