DAY bye DAY

いろいろね、あったぶんだけね 宝物(おもいで)もふえて

【GP浪漫遊】決勝:サイトウマサトシ(石川)vs.アライリョウタロウ(名古屋)

by Tetsushi Sawada

突然だが、皆さんは「真龍」というデッキをご存知だろうか?

今から7年ほど前、覚醒編環境の最中、石川のある伝説的プレイヤーが残した青抜き4cのグッドスタッフデッキのことを、私たちは敬意を込めてそう呼んでいる。

 

『真龍』
『<a href="https://dmvault.ath.cx/deck1534665.html" target="_blank">真龍</a>』
2 x フェアリー・ライフ
3 x 青銅の鎧
2 x ハッスル・キャッスル
1 x 母なる紋章
2 x 解体人形ジェニー
1 x 龍神ヘヴィ
1 x インフェルノ・サイン
2 x 超次元ミカド・ホール
1 x 超次元バイス・ホール
2 x デーモン・ハンド
1 x 威牙の幻ハンゾウ
1 x 邪眼皇ロマノフI世
1 x 黙示賢者ソルハバキ
1 x 光牙忍ハヤブサマル
1 x 粛清者モーリッツ
2 x 魔光王機デ・バウラ伯
1 x 雷鳴の守護者ミスト・リエス
1 x 不滅の精霊パーフェクト・ギャラクシー
1 x バジュラズ・ソウル
2 x 爆獣ダキテー・ドラグーン
2 x 地獄スクラッパー
1 x アブドーラ・フレイム・ドラゴン
2 x 龍神メタル
2 x 無頼聖者スカイソード
2 x 鎧亜の咆哮キリュー・ジルヴェス
1 x 龍仙ロマネスク
1 x 大地と永遠の神門
2 x 時空の喧嘩屋キル/巨人の覚醒者セツダン
1 x 時空の踊り子マティーニ舞姫の覚醒者ユリア・マティー
1 x 時空の戦猫シンカイヤヌス/時空の戦猫ヤヌスグレンオー
1 x 時空の凶兵ブラック・ガンヴィート/凶刀の覚醒者ダークネス・ガンヴィート
1 x 時空の賢者ランブル/恐気の覚醒者ランブル・レクター
1 x 時空の脅威スヴァ/神の覚醒者サイキック・スヴァ
1 x 時空の封殺ディアスZ/殲滅の覚醒者ディアボロスZ

環境にはドロマーハンデスや黒緑速攻、ネクラコントロールといったメタデッキが割拠していた中、突如としてDMvaultの大会で優勝を掻っ攫っていったそのデッキは、明らかに異彩を放っていた。

合計5枚しかない序盤のマナ加速、ピン差しが多く散らされたフィニッシャー、≪爆獣ダキテー・ドラグーン≫ など今見ても独特過ぎるカードチョイス。

 

もしかすると、当時のプレイヤー達からは「運が良いヤツが勝ったんだろうな」くらいにしか思われていなかったかもしれない。

しかし、石川のプレイヤーが生み出したこの"無茶苦茶な"デッキが、全国の強豪が名を連ねるDMvaultにおいて爪痕を残したということ、それは。

確かに、私達を歓喜させたのだ。

 

 

 

そして時は流れ2018年。

年の瀬の深夜、石川県某所で「真龍」に憑りつかれた者たちにより、ひっそりと開催された大会があった。

それこそが「真龍」と48枚同じ構築による完全なミラーマッチのみで行われる『GP浪漫遊』である。

 

前置きが長くなってしまった。参加者8人、スイスラウンド7回戦という過酷な予選を切り抜け、決勝に駒を進めた二人をここに紹介しよう。

 

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  • プレイヤー紹介

 サイトウマサトシ(写真左手)は、地元石川で長年競技としてのデュエルマスターズに向き合ってきたベテランだ。DMというゲームへの愛と行動力で、まだ公式からサポートを受ける前の黎明期から各地のCSに遠征してきただけでなく、2017年にはDM認定ジャッジの資格も取得。近年では運営側に立つ機会も多くなった。

 

最近は家庭や仕事との両立が難しく大会にはあまり参加できていないらしいが、それでもDMGP3rdでのトップ64入賞や2016年の年末調整で古豪、カワタカズキと繰り広げた激闘【苦、諦 年末調整2016:サイトウ(石川) vs. カワタ(兵庫)】を見るに、未だその勝負勘は衰えていないようだ。

また、サイトウは殿堂ゼロからボルコン、レギュレーション「あの頃」に至るまで、様々なフォーマットを愛するプレイヤーとしても知られている。

得意のエターナル環境で、持ち前の勝負強さを発揮することができるか。

 

そして対するアライ(写真右手)もまた、キャリアという意味ではサイトウに負けていない。

オンライン発のプレイヤー("medahaya"という名前の方が通りが良いだろうか)である彼は公式大会での目立った実績こそないものの、類稀な才能を持ったデッキビルダーとしてDMvaultを中心に「ジョバンニフォーミュラ」や「ドロマーコラプスロック」、「緑単tグランシリスビート」等、数々の独創的なデッキで結果を残し、メタゲームにその名を刻み続けてきた。

そんなアライの真龍との出会いは、大学への進学を機に地元名古屋から単身石川へ拠点を移した際、週末に参加したデュエルロードで石川のコミュニティと交流したことがきっかけだった。

現在は就職の為再び名古屋に戻ったアライだが、在学中の4年間で出来た仲間達に会うため、定期的に石川に遊びに来ている。

そして今、目の前に座っているサイトウもその「仲間」の一人であり、最大の「ライバル」でもある。

 

サイトウとアライの因縁は、2015年の大晦日まで遡る。

その年の年末も石川にいたアライは、浪漫遊にてサイトウに年末調整を挑まれ、まんまと勝負を受けてしまった。そして、最終的には資産の半分ほどを持っていかれる大敗を喫することになってしまう。

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試合終了直後の2人。どこか清々しい様子にも見えるが、アライの精神的ダメージは計り知れないものだったであろう。

 

 

そして翌年9月に神戸で行われたDMGP3rdの予選最終戦、勝てばSE進出、負ければトーナメントから名前が消えるバブルマッチで2人は再び相見えた。

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結果は、サイトウの白黒ドラグナーがアライの赤黒デッドゾーンを打ち倒し、予選突破。

アライは思った。「また、サイトウに負けてしまうのか…」と。

 

そして、今日。運命の悪戯か、神の思し召しか。

因縁の地で、アライは再びサイトウに一矢報いる機会を得た。

優勝賞品のクオカード2000円分など、最早眼中に無い。あとはただ、己のプライドの為に勝利を目指すのみだ。

 

 

 

予選は深夜にまで及び、営業時間の都合で会場が急遽24時間営業のマクドナルドに変更されるハプニングもあったが、どうにか決勝を始める手筈は整った。

アライはミルクティーを、サイトウはシェイクを啜りながら機材の準備ができるまでしばし取り留めのない会話をしている。

 全ての準備が完了し、お互いがお互いのデッキを入念にシャッフルしている中、サイトウから「2本先取にしない?」と提案があった。

「ここまでやって、簡単に終わっちゃったらつまらないだろ?」とでも言いたげなサイトウに、アライは特に反論することもなく了承した。お互い、最後までこの勝負を楽しみたい気持ちは同じらしい。

アライ「負け先だよね?」

サイトウ「負け先じゃなくて負け腕相撲で!(?)

といつもの軽口を叩き合う2人だったが、シャッフルを終え、初手を確認すると一気に表情が変わる。

多くのギャラリーが固唾を飲んで見守る中、平成最後の大勝負が今、幕を開けた。

 

  • ゲーム1

ジャンケンに勝利したアライが先攻だが、タップインを処理しマナ基盤を揃えていくのみで動きが鈍い。しかしサイトウもそれを咎めることができず、初動はアライの5t≪ ハッスル・キャッスル≫となった。

 

放置すれば取り返しのつかないアドバンテージ差をつけられる置物を設置されたことで、サイトウは一度大きく深呼吸する。

しかしトップから待望の緑マナを引くと即マナチャージし、挨拶代わりとばかりにこちらも≪ ハッスル・キャッスル≫!

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 一歩も譲る気はない、そんな意思が伝わってくるようにサイトウは力強くターンエンドを宣言した。

だが先手の利があるアライは、冷静に≪無頼聖者スカイソード≫を展開し、盾とマナ両方のリソースを伸ばしていく。

この隙に脅威を展開したいサイトウは、≪雷鳴の守護者ミスト・リエス≫を召喚するが…ここにアライの≪超次元ミカド・ホール≫が刺さる!f:id:bwd_shine:20190102113042j:image

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≪時空の賢者ランブル≫が着地したことで、逆に脅威への対処を迫られることになってしまったサイトウ。

ドローし、今一度手札を見つめ直すが…このターンは≪龍神ヘヴィ≫と≪無頼聖者スカイソード≫を相打つのみとなる。

アライは≪時空の賢者ランブル≫の効果で≪青銅の鎧≫を宣言。これは当然外すものの、一番期待値が高い唯一の3枚積みカードを宣言する定石通りのプレイだ。

ここで次のターンの覚醒を確定させたいアライは、≪解体人形ジェニー≫を≪母なる紋章≫で再利用するビッグプレイ!f:id:bwd_shine:20190102113238j:imagef:id:bwd_shine:20190102113241j:imageこれにはサイトウからも思わず溜息が漏れる。

 

サイトウの手札からは≪デーモン・ハンド≫と≪大地と永遠の神門≫が抜かれ、≪龍神メタル≫と≪鎧亜の咆哮キリュー・ジルヴェス≫が残った。

何としても除去を引きたいサイトウ、だが無情にもトップは≪爆獣ダキテー・ドラグーン≫と貧弱なもの。これは即マナに埋め、≪龍神メタル≫を展開するのみに終わる。

 

無事ターンが帰ってきたアライは先ほど確認していた≪インフェルノ・サイン≫を宣言し、≪時空の賢者ランブル≫を≪恐気の覚醒者ランブル・レクター≫に覚醒させる。f:id:bwd_shine:20190102113505j:image

≪鎧亜の咆哮キリュー・ジルヴェス≫のスレイヤー効果すら打ち消す悪魔を降臨させたアライは、ダメ押しの≪不滅の精霊パーフェクト・ギャラクシー≫を力強く叩きつける!f:id:bwd_shine:20190102113529j:image

最早恐れるものはないとばかりに≪恐気の覚醒者ランブル・レクター≫をレッドゾーンに送り込み出すと、2種の除去耐性持ちクリーチャーがサイトウを仕留めるのにそう時間はかからなかった。

 

アライ 1-0 サイトウ

 

あまりに圧倒的な負け方に、思わず「ブースト無かったらそりゃ握手なんだよな〜」とごちるサイトウ。

確かに48枚完全に同じミラーマッチにおいて、マナ加速や≪解体人形ジェニー≫が無い手札では先手後手の差を埋めづらいことは事実だ。

 

しかし、アライ側もそこに甘えることなく5t目に≪超次元ミカド・ホール≫を撃たず温存したプレイが光ったし、ハンデスのタイミングもほぼ完璧と言えるものだった。

もし手順が一つでも違えば、サイトウの≪雷鳴の守護者ミスト・リエス≫が生き残り、ゲームはまた違ったものになっていたことだろう。

 

順当に1ゲーム目を先取したアライだが、まだまだ油断はできない。

何せ、相手は2016年の年末調整でライフ1からの大逆転勝利を見せた男だ。勝負が決まるその時まで、一瞬も気を緩められないと言える。

そして、先ほどまで「引き強すぎるよ〜」と愚痴っていたサイトウもやはりというべきか、既に次のゲームを見据え気を引き締め直していた。

 

  • ゲーム2

サイトウの「負け先頂きます」の言葉でゲーム2が始まった。

初手を見たサイトウは思わず苦笑するが、その笑みが何を意味しているのかまだ分からないアライは、あくまでポーカーフェイスを貫く。

 

待望の先手を貰ったものの、3t目まで動きがないサイトウ。それを尻目にアライはタップインを処理してから3t目に≪フェアリー・ライフ≫を唱え後手分のテンポ差を埋める。

しかしサイトウもこれを黙って見ているわけにはいかない。

「握手拒否!」と呟きながら≪解体人形ジェニー≫を勢いよくプレイしたサイトウ。見えたハンドは≪ ハッスル・キャッスル≫、≪雷鳴の守護者ミスト・リエス≫、≪デーモン・ハンド≫、≪アブドーラ・フレイム・ドラゴン≫と潤沢なもの。

特に2種の置きドロソのどちらかが確実に通ってしまうのが痛く、またもアドバンテージ勝負で負ける展開になるか…と思われた矢先、サイトウは意外な決断を下す。

サイトウ「次5(マナ)やね?」

アライ「うん」

サイトウ「≪デーモン・ハンド≫で」

 

『除去できる可能性がある≪雷鳴の守護者ミスト・リエス≫は兎も角、≪ ハッスル・キャッスル≫を放置?』見ているギャラリー達の頭にも疑問符が浮かぶ。

そしてそれは対面しているアライにとっても同じだ。何かあるのか…?と勘繰りつつも、結局は≪ ハッスル・キャッスル≫を設置して先ほどと同じアドバンテージ勝負を挑む。

 

が、次のサイトウの行動で疑問符が納得に変わる。

5マナを倒し勢いよく≪バジュラズ・ソウル≫をジェネレート!

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手札の量で勝てないなら、手札を使わせないうちに殴り勝ってしまえばいい。

今度はこっちが先手の利を活かす番だとばかりに急戦を仕掛ける。

一転して追い詰められたアライ。だが、トップは先ほど捨てられたばかりの≪デーモン・ハンド≫!

しかし、ここで≪解体人形ジェニー≫ごときに貴重な確定除去を使っていては勝てる試合も勝てない、というのも事実だ。小考の末、アライは≪雷鳴の守護者ミスト・リエス≫を召喚してターンを返す。

 

今がチャンスと言わんばかりにサイトウはほぼノータイムで≪バジュラズ・ソウル≫を≪解体人形ジェニー≫にクロスさせ、緑マナを縛りつつ攻撃。アライは祈るように盾を1枚ずつ手札に加えていく(主催者の意向で旧ルール準拠だ。)が…トリガーは捲れず。

 

とりあえずドローしてみるアライだが、マナがチャージ込みで5しかないことに加えて≪バジュラズ・ソウル≫への直接的な解答が手札に無く、≪青銅の鎧≫で被害を最小限に抑えることが精一杯という苦しい状況だ。これにはじっと腕を組んで盤面を見つめていたサイトウも少しホッとし、すぐさま≪超次元ミカド・ホール≫を唱え更なる脅威を展開していく。

 

≪バジュラズ・ソウル≫をクロスした≪解体人形ジェニー≫の2度目のアタック。最早アライのマナゾーンには赤マナしか残っておらず、≪鎧亜の咆哮キリュー・ジルヴェス≫による反撃も許されない上、トリガーも無い。

龍神ヘヴィ≫で盤面を減らし抵抗するものの、サイトウが残った≪時空の賢者ランブル≫に再度≪バジュラズ・ソウル≫をクロスさせると、アライはドローを見ずに投了した。

 

アライ 1-1 サイトウ

 

予選中、サイトウはこんなことを口にしていた。

「真龍同型は殴れる時に殴るが板。」

曰く、≪龍神メタル≫や超次元クリーチャーなど、Wブレイカー持ちが多く最終的に殴り合いになりやすいこの同型においては序盤のうちに盾を偶数にしておくことが勝利への近道だと言うのだ。

 

サイトウはその言葉通り、準決勝では5t目に出した≪時空の賢者ランブル≫でおもむろにアタックを仕掛け、最後は≪鎧亜の咆哮キリュー・ジルヴェス≫を絡めた奇襲でぴったり殴りきり勝利していた。

同型においてはクロスするラグや盾を殴るリスクが大きいと思われていた≪バジュラズ・ソウル≫のポテンシャルをここまで引き出せたのも、サイトウの経験とプランニングによるものかもしれない。

往年の『バジュラゲー』を彷彿とさせる華麗な攻めで何とかスコアをイーブンに戻した。

 

「3枚の中に≪超次元ミカド・ホール≫かトリガーあれば返せたんだけどな」
「マジで≪爆獣ダキテー・ドラグーン≫でもなんでも良かったからね。かなり受けは広かったんだけど、まあしょうがない」

と語るのはアライだ。

サイトウのプレイを『一貫して不定』と評するアライも、この奇襲戦法には対応しきれず、悔しさを滲ませる。

だが、泣いても笑っても次でどちらかが勝者、どちらかが敗者になることは決まっている。

今は後者にならないために、最善を尽くすだけだ。

 

  • ゲーム3

再度、アライの先攻。2t目にして「先手か…微妙だな…」と呟きながら悩み始めるが、小考の後「…いいか、終わり!」と思い切った様子で≪光牙忍ハヤブサマル≫をチャージしターンエンドを宣言する。

 

続くターンも、マナ加速は引けているものの緑マナが無い様子のアライは、諦めて≪フェアリー・ライフ≫をチャージしエンド。対するサイトウはしっかり≪青銅の鎧≫を引き込み、先手後手を入れ替える構えだ。

4t目になっても動きがない上、黒マナが見えていないアライ。これを好機と見たサイトウは、深呼吸の後、≪雷鳴の守護者ミスト・リエス≫を盤面に送り出す。f:id:bwd_shine:20190102132318j:image

しかし、アライは黒マナを手札に隠し持っていた!≪超次元バイス・ホール≫をチャージし、≪超次元ミカド・ホール≫を唱え≪時空の賢者ランブル≫を着地させる!f:id:bwd_shine:20190102132515j:image

1ゲーム目のデジャヴかのような展開に、サイトウの表情が歪む。

そして手札に7マナのカードが溜まっている様子のサイトウは6マナで何もできず、力なくターンエンドを宣言する他ない。

 

1ゲーム目と同じく、一貫して≪青銅の鎧≫を宣言するアライだが、デッキは応えず。しかし、次のターンには確実に裏返るというプレッシャーは依然としてサイトウに重くのしかかる。

ここでアライはお返しとばかりに手札のタップインを処理しつつ、≪雷鳴の守護者ミスト・リエス≫を展開。対処しなければならない脅威が2体に増えたサイトウは深いため息をつく。

 

サイトウは≪時空の賢者ランブル≫こそ≪地獄スクラッパー≫で退場させるものの、一方的に≪雷鳴の守護者ミスト・リエス≫でドローされる心中は穏やかではないだろう。

アライはここでも冷静に手札をキープしつつの≪無頼聖者スカイソード≫でじわじわとアドバンテージ差を広げていく。

だがここでサイトウはアライの≪雷鳴の守護者ミスト・リエス≫に対し≪超次元ミカド・ホール≫から≪時空の賢者ランブル≫!f:id:bwd_shine:20190102133605j:image

 

お互いマウントを取り合うシーソーゲームから一刻も早く抜け出したいアライ。手札をじっと見つめ、プランを練った末に出した答えは…。

7マナから切り札、≪邪眼皇ロマノフI世≫!f:id:bwd_shine:20190102134054j:image

対処手段が非常に限られるフィニッシャーの登場に、サイトウも身を乗り出す。

ここでアライは盾を確認しつつ、≪大地と永遠の神門≫や≪インフェルノ・サイン≫といったリアニメイト呪文を有効牌に変えるべく、≪龍神ヘヴィ≫を墓地に落とす。

ターンが返ってきたサイトウ。≪時空の賢者ランブル≫の効果で≪爆獣ダキテー・ドラグーン≫を宣言するが…一発覚醒とはいかず、これにはアライも一安心。

サイトウは長考の末、≪超次元バイス・ホール≫を撃ち込む。アライの手札は≪デーモン・ハンド≫、≪無頼聖者スカイソード≫、≪爆獣ダキテー・ドラグーン≫。

≪デーモン・ハンド≫は落とせたものの、≪邪眼皇ロマノフI世≫で再利用されてしまうことを分かっているサイトウは「そうなるよな…」とぼやきつつ、逆転への希望を繋ぐべく≪時空の封殺ディアスZ≫を戦場に送り込んだ。f:id:bwd_shine:20190102135517j:image

 

無事≪邪眼皇ロマノフI世≫をコントロールした状態でターンを迎えることができたアライは、一度手札の≪爆獣ダキテー・ドラグーン≫をマナに埋めかけるが、再度手札に戻し小考。その結果、相手の≪時空の封殺ディアスZ≫の返霊能力のことを考え手札にキープした。

そして、今引きの≪超次元ミカド・ホール≫を撃ち込みまたも≪時空の賢者ランブル≫を送り出す!f:id:bwd_shine:20190102140257j:image

相手の≪時空の賢者ランブル≫は≪邪眼皇ロマノフI世≫で殴りつつの≪デーモン・ハンド≫で処理し、徐々に戦況がアライに傾いてきた。

 

しかし、サイトウもただでは終わらない。割られた2枚の盾から手に入れた≪ 粛清者モーリッツ≫で≪時空の賢者ランブル≫をタップしつつ、≪解体人形ジェニー≫でアライの≪爆獣ダキテー・ドラグーン≫を奪う。

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そして、≪時空の封殺ディアスZ≫でアライの≪時空の賢者ランブル≫にアタックしつつ、殲滅返霊を発動。アライの墓地の≪超次元ミカド・ホール≫ごと、リソースを奪いにかかる。

 

ここでアライ、サイトウの手札が残り1枚である事を確認しつつ、長考に入る。盤面の≪無頼聖者スカイソード≫は確定として、あともう1枚何をボトムに送るか。

手なりなら手札の≪無頼聖者スカイソード≫を捨てて、≪時空の封殺ディアスZ≫と≪時空の賢者ランブル≫を相打ってもおかしくない場面だが、流石、アライは土壇場でも冷静だった。

次のターンに≪邪眼皇ロマノフI世≫で≪時空の封殺ディアスZ≫を殴り返せることに気付いたアライは、盤面の≪無頼聖者スカイソード≫と殴られている≪時空の賢者ランブル≫を選択した。

 

アライは、予定通り手札の≪無頼聖者スカイソード≫をプレイ、≪邪眼皇ロマノフI世≫で≪時空の封殺ディアスZ≫を殴り返しターンを終了。

ここまで完璧なプレイを見せてきたアライだったが、サイトウが≪ 魔光王機デ・バウラ伯≫をトップしたことで息を吹き返す。f:id:bwd_shine:20190102142318j:image

既に10マナ溜まっているサイトウは、墓地から≪超次元バイス・ホール≫を拾いそのままキャスト。アライの手札の≪フェアリー・ライフ≫を落としつつの≪時空の凶兵ブラック・ガンヴィート≫で遂に≪邪眼皇ロマノフI世≫を討ち取ることに成功する!f:id:bwd_shine:20190102144855j:image

ついでのように≪ 粛清者モーリッツ≫の効果も誘発し、いつの間にかアライの盤面は空だ。

≪時空の凶兵ブラック・ガンヴィート≫の覚醒も見えている以上、実質的なロックが掛かっているアライは静かにドローゴー。

 

ここからは完全なトップ勝負。サイトウが引いたのは…魂の≪バジュラズ・ソウル≫!f:id:bwd_shine:20190102143005j:image

10マナを捻り、そのまま≪ 粛清者モーリッツ≫にクロスしてアタック。アライの盾は2体の≪無頼聖者スカイソード≫によりまだ7枚もあるが、ここからマナを縛りつつ2点ずつ刻んでいけばいずれ逆転の芽は摘まれるだろうという算段だ。

とはいえアライとしてもマナが充分にある状態で殴られる分にはまだ希望がある。この盾2枚から有効牌を引けさえすれば。祈るように捲ると、そこには…

 

 

 

 

 

 

 

 

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起死回生の≪インフェルノ・サイン≫!!

 

「マジかぁ〜…」と落胆するサイトウ。そしてアライ自身も、予想の斜め上をいくデッキからの回答に驚きを隠せない様子だ。墓地から≪邪眼皇ロマノフI世≫を釣り上げつつ山札から≪超次元ミカド・ホール≫を落とし、反撃の狼煙を上げる。

このチャンスを是が非でもモノにしたいアライ。まずはターン開始のドローを済ませ、じっくりと思考を巡らせる。

 

ここで盤面を整理しよう。アライのマナは6だが先ほどの≪バジュラズ・ソウル≫で黒マナが無い状態。そして手札には≪超次元ミカド・ホール≫、≪青銅の鎧≫、≪ ハッスル・キャッスル≫の3枚。

そしてサイトウの盤面には≪バジュラズ・ソウル≫をクロスした≪ 粛清者モーリッツ≫、≪時空の凶兵ブラック・ガンヴィート≫、≪ 魔光王機デ・バウラ伯≫、≪解体人形ジェニー≫。

 

明らかにここが分岐点となる。

何度も手札を裏向きにマナに置いては戻しを繰り返したアライは、意を決し≪ ハッスル・キャッスル≫をチャージし≪青銅の鎧≫でアンタップインの黒マナが落ちることに期待するプレイを取ることにした。

 

捲れたデッキトップは…何と≪解体人形ジェニー≫!

土壇場でデッキが応えてくれたことに安堵するアライ。そのまま手札から≪超次元ミカド・ホール≫をキャストし、相手の≪解体人形ジェニー≫を除去。更に≪超次元ミカド・ホール≫を≪邪眼皇ロマノフI世≫で再利用しつつ≪ 粛清者モーリッツ≫を殴り返す。

一挙に≪時空の賢者ランブル≫と≪時空の封殺ディアスZ≫が並び、気付けば盤面は圧倒的なものに。f:id:bwd_shine:20190102150714j:imagef:id:bwd_shine:20190102150720j:image

 

しかしこれでアライの手札がゼロになったことで、≪時空の凶兵ブラック・ガンヴィート≫が覚醒。f:id:bwd_shine:20190102165355j:imageまだサイトウにも僅かだがチャンスは残されている。

両手を合わせ、文字通り祈るようにドロー…引いたのは≪龍神ヘヴィ≫。

とりあえずキャストし効果を使ってみるものの、御役御免とばかりにタップしている≪邪眼皇ロマノフI世≫を破壊され、殴り返す先が無くなってしまう。

龍神ヘヴィ≫の効果によるドローもこの盤面を打開できるものではなく…ターン終了を宣言するサイトウ。

 

ターン開始時にアライは≪邪眼皇ロマノフI世≫の効果によってボトムに送られた≪超次元ミカド・ホール≫を宣言し、≪恐気の覚醒者ランブル・レクター≫に裏返す。

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「やめてくれ〜…俺はまだ生きたいんや〜…」と懇願するサイトウ。

既にほぼ盤石な盤面だが、この長かったゲームに終止符を打つべく、遅れてきたもう1枚の切り札が駆けつけた。

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サイトウ「いやそれはあかんやろ!!!」

 

あまりにも無慈悲なトップデックに、ギャラリーからも思わず歓声が上がる。

しかしアライはあくまで冷静に、≪時空の封殺ディアスZ≫でリソースを刈り取りつつのアタックで更にサイトウを追い詰める。

手札の不要牌と≪バジュラズ・ソウル≫をボトムに送ったサイトウは、トリガーから≪爆獣ダキテー・ドラグーン≫を捲るものの、根本的な解決にはなっていない。

 

サイトウは最後のあがきとして≪恐気の覚醒者ランブル・レクター≫の攻撃を止めた≪ 魔光王機デ・バウラ伯≫を≪インフェルノ・サイン≫でリアニメイトしつつ≪不滅の精霊パーフェクト・ギャラクシー≫のSFを無理矢理割ることに成功するが、ターンが帰ってきたアライからはダメ押しの≪威牙の幻ハンゾウ≫。

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頼みの綱であった≪ 魔光王機デ・バウラ伯≫も除去されてしまい、この盤面を返す手段がデッキに無いことを誰よりも知っているサイトウは、そのまま右手を差し出した。

 

アライ 2-1 サイトウ

 

試合後、アライは「≪時空の凶兵ブラック・ガンヴィート≫が裏返ったところ、手拍子だったな…。」と呟いた。

それを聞いていた、今回のGPの主催者でありアライの師でもあるカワタも「俺もあそこはどうかと思った。ていうか、普通に≪ ハッスル・キャッスル≫貼ってゆっくりすればよくなかった?」と意見を投げかける。

サイトウの場に≪バジュラズ・ソウル≫がある状況だったので一概には言えないところだが、それを受けたアライはひとしきり考えを述べた後、「まあ、結局上が強かったですね」と結論付け、笑う。

 

そして、負けたサイトウも調整仲間であるイシオカと要所のプレイについて延々議論を重ねていた。が、感想戦を終えると、おもむろに「フリーしよ、フリー」と対面のアライに対戦を求め始めた。

この時既に深夜2時。何となく、筆者のようなプレイヤーでも、彼らの強さの秘訣が分かったような気がした。

 

 

こうして、午後10時から深夜2時過ぎにまで及ぶ長く過酷なトーナメントが終わった。

しかし、「真龍」というフォーマットはこれで終わりではない。今回は試験的に定員を8名としたが、次回開催があるならばもっと規模を大きくしたいとの声も多く上がった。

老害」「ゲートボール」などと揶揄されることも少なくないが、超次元環境を生きた"あの頃"のプレイヤーなら絶対に楽しめるフォーマットだということは強く主張しておきたい。

 

最後に、主催のカワタ選手と参加者全員分の「真龍」を用意してくれたアライ選手、そして参加してくれた全てのプレイヤー達に最大限の感謝と敬意を表し、筆を置こうと思う。

次回がいつになるか、私にも分からない。だが、この伝説の一戦が私達の記憶にある限り、このフォーマットは生き続けると私は信じている。

 

 

 

 

 

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GP浪漫遊を優勝し、初代龍王の栄冠を手にしたのはアライリョウタロウ(名古屋)!おめでとう!